「KABBALA#21」1999年8月28日発行

Exclusive interview with HYDRA

日時:平成11年7月24日(土)午後1時頃
場所:大阪難波・ティーサロン&バー・サロンローズにて
話し手玉井純夫<Vo>、山田彰彦<G>、乾和也<Bs>(HYDRA)
聞き手:杉浦康司(KABBALA’zine)

やっとアルバムが出そうという事ですが、ここまで随分と時間がかかってしまいましたね。
玉井(以下玉):そうですね(笑)。まあメンバーチェンジも込みですが、2年半かかってしまいました。

前作の「HYDRAV」デモから4年が経ってしまいましたが、それはやっぱりベーシストが2人代わってるっていうのが大きいですか。
玉:ま、正確には3回なんですが(笑)。若干1名ほど、半年だけでしたけど…
まあダメだったんで辞めていただきました。
まあ、そうですねえ、そのあと西田で1年か。
山田(以下山):うん、1年。
玉:今の、このラインナップは事情がない限り当分続くでしょう。

ここまでの2年半はどういった経過を経てきたのでしょうか。
玉:まず西田在籍時に5曲は録ってたんですよ。西田が辞めたのが去年の2月だったっけ?去年の2月だったな。
それから、彼が辞めて今のベースの乾が入るまでが、6ヶ月、まるまる6ヶ月空いたんですね。
それで、結構入念なリハの後に去年のll月から録音を再開して、4月に録り終わりました。
まあ、その間、曲作りとかも平行してやってたので…
そうですねえ、僕は煮詰まってました(笑)。
乾(以下乾):ラストスパートが凄かったです。
玉:ラストスパートで、僕は最後の3曲は歌を1時間半で入れしましたから(笑)。
リハーサルが無かったのでね、ぶっつけ本番でね。
だから前の晩に詞を仕上げて、「ああ、でけたー!」言うて…
普通だったら頭の中でオケかけてシミュレーションするでしょ、ここの歌はこう歌おうとかみたいなね、それを全くせずに「でけた〜!」って言うて、シャープペンシルを置いた途端に寝てしまったから(笑)、もう全く録音ではぶっつけ本番でしたね。
逆にそれが良かったのか、結構鬼気迫る歌になったというか(笑)

長かったといわれているレコーディングですが、録音作業自体は非常にタイトなスケジュールだったんですね。
山:ん〜、短かったかもしれんな。
玉:スタジオでのリハーサルは結構きっちりやってたんでね。
録音はデジタルだったんですよ。
ビデオのHi8ってあるでしょ、あのデジタルHi8のレコーダーを使ったわけですけど、差し替えとかそういうのが全く利かないんで、普通のアナログと録音方式は一緒で、だから基本的に録音は一発勝負です。
たくさんやり直しをしたからって、それで良いテイクが録れるというわけではないんですけど、ただまぁ、一発勝負っていう緊張感があるんで、リハーサルは入念にして、頭の中でシミュレートして、それからスタジオ入ったんでね、そうそうやり直しっていうのは無かったですね。

じゃあ、ワンテイクで良いのが録れたと思ったらそれで終わり。
玉:それで終わり、ただもうこればっかりは10テイクやったからって、10テイク目が良いかっていったらやっはり違いますからね。
何て言うても、1テイク目はどういうわけか変な勢いがあるでしょ(笑)。
そういう意味では、ライブ感というか、そういうのは出たんではないかと思いますね。
山:俺は曲作りに追われてたからなぁ。
玉:俺は詞作りに追われてたな。
山:曲作りに追われて、自分のギターのリハーサルが出来なかったからなぁ。
気合い、勢いで行ってしまった。

曲っていうのは既に練リ上げた形で持ってくるんですか。
山:ん〜っとね、だいたいひと通り作ってあるんだけど、頭の中で幾つか選択肢を設けてあって、そのバリエーションを「こっちがええ」「どっちがええ」ゆう感じで三種類くらいあって、それでまた次の選択肢の幅が変わっていくという感じで。
だから、頭の中で色々と枝分かれしていってるのを順番に繋ぎ合わせていくっていうか…シミュレーション・ゲームみたいな流れやね。
それで、それを「どういう風にしたい」という意見を聞いて、予め用意してた選択肢の中で幾つか披露して「どれがいいか」っていう感じです。
だから1曲のうちで幾つもパターンが増えてしまって頭の中でごっちゃになりますわ(笑)。

ドラムやベースのリズムラインっていうのは。
山:それは最初は特に指定しないですね。
玉:基本的に曲はギターの山田が作るんですけど、ほぼその状態でリズムもそうなんですけど、アウトラインっていうのが決まってくるんですよね。
そこからどう続けていこうかってなるわけですけど…
変拍子使いたいって言い出すのはドラムの角谷なんですよ(笑)。「ここ変拍子入れてくれ」って。
ただ、彼の場合は自滅してるっていう部分も多々ありあますが(笑)。当然録音はやりきれるようになってから入ってるわけですけどね。

録音ば殆ど一発勝負に近いという事なんですが、プレイ的なミスは無かったんですか。
山:いや、そんな事はないですよ。
玉:それは有りますよ。
山:豪快に聞違ってる所がありますよ。間違ってるっていうよりは…ミスタッチはありますよね、ギターの場合、それは多少妥協してます,,
玉:っていうかね、それを上回る勢いというかドライブ感が出てれば、それがOKテイクになってしまうんで。
あの…結果的に、頭の中に思い描いてた音っていうのが歴然とあったら、やっぱりそれは使いますよ。
そういう事ですよね。

ベーシストが乾さんに変わる前に、既に西田さんで5曲録っていたということなんですが、それはベースだけ差し替えたんですよね。そのプレイば前任のプレイを忠実になぞったんですか、それとも自分の色を出してアレンジしたんですか。
乾:初めの方は殆どコピーみたいな感じやったんですけど、リハーサルを重ねていくうちにちょっとづつ自分の色が出せた…かなぁ、という感じですね。

元々ギタリストだったんですよね。それが何故ベーシストとしで加入しようと思ったんですか。
乾:これがねぇ、ドラムの角谷君の知り合いが僕の友達やったんですよ。
それでそのコから「HYDRAのベースが抜けたからやってみいや」みたいな事を言われて。
で、それまで全然ベースを弾いたことが無かったから、初めは「絶対に無理や」って[断ってたんですけども、ちょっと一晩考えていくうちに「これは凄いチャンスやなあ」って思いはじめて、で次の日にはもうHYDRAに連絡してもらう事になったんですよ(笑)。
玉:一晩で決めたんか(笑)。
山:「ずっと考えていくうちに…」言うて、一晩や(笑)。
乾:いや、「一晩」ずっと考えてたんや。
山:めっちゃ速いやん、決断が。

ギターとベースは同じ弦楽器ですけど、似て否なる部分が多々あるじゃないですか。そういった部分で苦労した点も多いのではないかと思うのですが。
乾:最初はね、指弾きっていうのは今からじゃあ…出来ないとは言わないですけども、まあ最初から指弾きっていうのは考えてなかったですね。
それだったら、ピック弾きっていうんだったら、ベースっていうのを結構ナメてたんですよ(笑)。
「ギターが弾けたらベースなんてチョロイもんや」って。
ほんで初めは「出来るやろ」って結構簡単に考えてたんですけども、実際にリハーサルしだしで、ベースはベースなりに難しいんやなぁっていうのが解ってきて、今でもまだ養成中なんですけど(笑)。

エライ事になってしまったなぁ、っていう感じですか。
乾:ちなみに師匠は山田さんです。
山:何で俺が師匠なんかわからへんけどな。でも一番(乾氏のベースプレイに)うるさいのは本当や。

ギタリストとしてべーシストに求めるのはリズム隊としてのベースなんですか。
山:いや、そういう事はないですけどね。
乾:まだそのレベルまでにも行ってないっていうか(笑)。ピッキングから教えてもらってる所です。
山:ベース弾くのも僕自体が結構好きなんで。でまぁ、当然リズムと、あとベースのボトムをおさえる部分、低音がしっかりうねりを演出してるかどうかですけど。
あと、最近のベースって凄い幅広いでしょ。ある部分メロディも歌えるし。
だからベースとしてのある程度基本的な部分っていうのをちゃんとマスターして、あとはギタリストから変わったっていう、それを上手いこと使って。乾の場合はギタリストやってたお蔭で指が動くんで、それを使わん手はないっていうか。ギター弾きがすぐベース弾いたらなるようなオモチャを弾くみたいな弾き方にはならんようにせんと。
玉:その点は少しづつだけどクリアされつつあるね。
乾:そこで壁にブチ当たってますけど(笑)。高い壁が…。
山:ピックでベース弾く時のタッチやニュアンス…それはやっていくうちにマスター出来ると思うんですけどね。
玉ピッキングのタッチでも音のニュアンスがガラッと変わるしね。
山あんまり「そのうち…」なんて悠長な事は言ってられんけどな。
玉:「そのうち…」とは言うてられんな。

そんなわけで、アルバムがやっと完成しましたが、全10曲入リで60分を越えるという事で結構なボリュームなんですけど、詰め込みましたね。
玉:世間ではこれを大作と呼ばれるんでしょうね。
山:70分越えてないから大丈夫や(笑)。
玉:後半の3曲に関して言うと、コンパクトな曲作りっていうのを心掛けましたね。それでも5分オーバーか(笑)。

今回の「EXHIBITION OF MALICE」はコンセプトアルバムなんですよね。具体的にはどういったコンセプトなんでしょうか。
玉:そうですねえ…まあ、題名通り、人間の所謂「悪意」ですよね。
これがまず根底にあって、どの曲に関しても最後には非常に悲劇的な終わり方をしてるんですよ。
そういう部分でのコンセプトアルバムなんで、いわゆるQUEENSRYCHEの「OPERATION:MINDCRIME」のような筋道立てた(ストーリー展開)っていうのは無いんですけどね。
ただまぁ、根底に流れているテーマが(どの曲でも)一緒だっていう部分ではコンセプトですよね。
まぁ、小説で言うと、連作の短編集みたいなもんですね。

曲毎の主入公は違うけれど、主題が一緒だと。
玉:それと題材もそれぞれ違いますけどね。
ただ、根底に流れているのがどうしようもない絶望感であったりとか…
悪意を人に対して振りかざす人間、悪意を振りかざされる側の人間、二通りの見方も考えてありますし、例えば詞の中で言うと"They"っていう言葉が出てくるんですけど、この使い方が曖昧になってる所に注目して欲しいですね。(そこに注目すると詞の内容が)ある意味ではわかりやすくなると思いますけどね。
悪意を振りかざす人間も、悪意を振りかざされる人間も、実は同じじゃないか?っていう…
結果的に入間の弱さや脆さがどっちの面に出るかっていうだけの話でね。
結果的には「あんた達、弱いんじゃないの?」っていう…。

どちらかと言えぱ皮肉的な見方なんですかね。
玉:皮肉ですね、きっと(笑)。全編皮肉ってる部分が多々見られますね。

最初からそういう題材で統一しようと思っで歌詞を書いたんですか。
玉:そうですねぇ…最初の2、3曲は特にテーマとしては無かったんですけど、やっていくうちに「ああ、取り敢えず今の答えとしてはこれなんだな」っていう感じですかね。
(アルバムの)中の5曲っていうのは、前々からライブでもプレイしてたんですけど、この5曲ぐらいが核になり始め
て、方向性が決まりましたね。

じゃあ、ここでちょっと曲紹介をお願いしたいんですけど、1曲目の“Proceeding Of Heretic”はイントロ込みなんですよね。
玉:あれの頭のキーボード使ってる部分はSEなんですけどね。あれは、あの曲のテーマに沿って作ったSEです。
山:スケール的なものも結構引用してます。
玉:あれはドラムの角谷が弾いてるキーボードなんですけどね。
それで、テーマ的には、所謂人間の歴史の中で非常に醜い部分があったとすれば、西洋で言えば魔女狩りだろう、と。
あれは人間の弱さ脆さっていうのがモロに出てるんじゃないかなあと。
今回のアルバムのテーマには一番フィットしてる曲なんじゃないかなって思うんですよ。
例えば、魔女狩りっていうのが根底になるんですけど、例えばナチスのユダヤ人狩りとか戦後50年代のアメリカの赤狩りとかも、非常に世相が悪くて人間がヒステリックになってる時にその怒りや絶望の矛先がどっちに向いちゃうかっていう、そういう曲なんですよ。
実際にこの曲の詞を書くのに半年かかっちゃいました。非常に辛い作業でした(笑)。

サウンド的には、オープニングに相応しい、のっけから頭振れと言わんぱかりの、HYDRAとしてはファストでアグレッシブなナンバーですよね。…ところで、曲があって詞を作るんですか。
山:テーマが先やな。
玉:テーマをまず先に話し合うんですよ。それに沿って曲を書いてくるし、僕もそれに沿って詞を書いていくし。
山:(テーマを)詰める時は大まかなストーリーまで決めてしまうね。
玉:最後はどうなってしまう、とかね。

ストーリーに合わせて曲を展開させていくという事が、HYDRAらしい、展開や構成の複雑さにも繋がってくるんですかね。
玉:まあ結果的に…。俺らにとってあれは必然やな。
山:その元のテーマがあって、それを色んな見方をしていくと、見る角度によって音が変わるっていう、それを幾つか大まかに分けて、その音だけでもある程度雰囲気がわかるようにっていう感じで作るんですけどね。
玉:実は僕等なりにわかりやすさは模索してるんですけどね。
だから、変拍子を採り入れるにしてもそれは全部必然です。偶然ではない。

2曲目の“Computer Syndrome”は結構以前からライブでも演っていた曲ですが、一曲目に続いで間髪入れずに入ってきますね。
玉:ここは折角アルバム聞いてるんだから休んでもらっちゃ困るっていう部分でちょっと詰めちゃいましたけど(笑)。
例えば…そうですねえ、AC/DCの「BACK IN BLACK」っていうアルバムあるでしょ。
あれって曲間を非常に詰めているけど、あれはある意味では正解だと思うんですよね。
休んでいる場合じゃないそっていうね。
山:聞き込むためにどうしても詰めるっていうか。
玉:この2曲っていうのは僕等にとってもそうなんですけど、非常に緊張感のある曲なんで、曲問を詰めたっていうのは緊張感を持続するためという部分もあるんですよ。

この2曲でテンションを高めて、その勢いを最後まで持続させるというか。
玉:一応僕等にとっては箸休め的な曲もあるんですけども(笑)。ただ、端から見てたらわからないだろうなっていう。
結構りラックスして録った部分とかリラックスして作った曲とかもあるんですけどね。
まあ、あと“Computer Syndrome”に関して言うと題材的には、コンピュータのRPGのゲームってあるでしょ、あれって結構ヒーローに自分の名前を付けて成りきっちゃう人っていてるでしょ、その典型的な例なんですけどね。
山:昨日の(全日空機の)ハイジャックもそうやな。乗っ取って…あれもシミュレーションゲームのやり過ぎでちょっと頭おかしくなって。
玉:そうやな。ああいうパターンでルナティックになっちゃうっていう人間の話なんですけどね。
山:(詞の内容も)ああいう展開なんですけどね、まさかほんまにそんなん起きるとは思わなかったけどな。
玉:酒鬼蕎薇の事件かて、この曲が出来てからすぐにあの事件が起こっちゃったからね。
「こんな奴はおらへんやろ」ってみんなで言ってたんやけど、「いてんがな〜!」みたいな(笑)。
山:さすがに「毒入りカレー」は作ってなかったけどな。ちょっと思いつかんかったよな。
玉:ちょっと「毒入りカレー」で曲は書けんじゃろ。
…んで最後には町中でナイフを振り回して入を殺して、血まみれになってやっと自分が何やったか気付くっていう、パトカーのサイレンが自分を取り囲んで逮捕される時に彼が何を叫んだかというと「俺はゲームをしてただけなんだjって、落語で言うとサゲというかオチがあるんですけどね。
山:結構オチ付いてます。

3曲目の“The Undertaker”。
玉:これは題名通りなんですけど、墓掘り人の話なんですよ。
今の墓堀人って言うと、会社なんかにリストラってあるでしょ、あれの肩叩く側の人間なんじゃないかなぁって。本当に逆説的な意味なんですけどね。
そのまま詞を読んじゃうとただの年寄りイジメの曲になってまうから(笑)。
国とか社会とかって国民を守るためにあるシステムなのに逆にそれを守るために人間が擦り減っちゃってるっていう部分で(中略)「最後にはこれかい!」っていうね。

この曲の中間部にジャジーな展開が入ってきますが、あれは・・・。
山:あれは都会の雰囲気を出すために。明るくもとれるし暗くもとれるという意味で、テーマが肩叩きなんでね、都会の雰囲気を出そうと思った時に、ニューヨークの街中みたいな感じがいいかなって。
それやったらジャズが似合うかなって思って。
玉:ある意味では変な冷たさっていうのが出てると思うんですよ。
山:最後にちょっとジャジーになって、都会の雑踏の中に消えていく。

次の“Changes For Primary Form”もライブでな結構演っていた曲ですよね。
玉:そうですね。ベースの大崎がいてた頃の最後の方の曲ですよ。
山:彼はあの曲の練習には3回位しか出てないけど。
玉:確かに。あれはですねぇ、テーマとしては南アフリカ共和国にアパルトヘイトって昔あったでしょ。あれなんですわ。
題材になってる人間は死刑執行人なんですけど、これは小説から考えて完結された部分があって、ジェラルド・シーモアっていうイギリスの冒険物とかアクション物とか書いてる人がいるんですけど、その人の「ブレトリア救出戦」っていう小説があって、舞台としてはアパルトヘイトが最盛期の頃の南アフリカで、サブキャラなんですけど死刑執行人でフリッキー・デ・コークっていう人がいましてね、こいつが良心の呵責もなく痛みもなく義務的に死刑を執行するわけですよ。
(中略)結果的には全世界的なムーブメントでアパルトヘイトは無くなっちゃいましたけど、そうなった時にそういう死刑執行人がどうなるかって言ったら…
わかるでしょ?あなたたちがそうまでして守ってきた社会って一体何だったんだっていう…
だから題名としては「元に戻る」っていう題なんですけどね。

歌詞の内容は深刻ですけど、サウンド的には結構キャッチーという印象もありますね。
玉:そうですね。深刻なテーマだから深刻にすればいいってもんじゃないでしょ。

次は“Dark Seed”。
玉:これは、テクノロジーがこのまま暴走しちゃったら人間味だとかヒューマンファクターといったものが無くなっていってしまうぞっていう警告なんですけどね。
例えば細菌兵器を作る研究者がいてるとしてね、これが細菌兵器になるっていう前提を知ってか知らずかはわからないけど、ある意味では研究を楽しんでるんちゃうか、っていうね。
それとも事務的に仕事としてやってるのかわからないけど、自分が一体何を作ってるのか自分ではわかってるのかなっていうね。
そういう空気とか幽霊みたいに漂ってる物が実体化してしまったら破滅に繋がるぞっていう曲ですね。

同じメロディで初めと終わりが。
玉:あれは非常に意味深でしょ(笑)。あの曲ってなんか後味悪いでしょ。
その辺は狙って作ったよね。

そして“Phantom Of Carnival”ですが。
玉:これはまあ、悪意ってどういうものかっていう考察から始めた曲なんですよ。ストーリー的にどうのこうのっていうのも歴然とあるんですけど…
悲劇ってある側面から喜劇でしょ?
その悲劇をもたらす人間っていうのをどういう風に表現したらいいかっていう事を考えて…
主人公はピエロなんですよ。どっか狂ってるわけですよ。
このピエロは端から見たら本当にピエロなんですよ、面白おかしい事やるっていう。
そんなカーニバルをみんなが楽しんでる時にある日悲劇が起こるんですけど、猛獣の檻を全部開けて動物全部放したりしたらサーカスのテントの中は阿鼻叫喚になりますよね。
明かりのたいまつの火が燃え移ってテントが燃えて、そんな中でテケテケ笑ってたりする。それでたくさんの人が死んで、その悲劇に巻き込まれた人達は悲嘆にくれるわけですよ。悲嘆にくれた後どうなるかっていったら、その人達はピエロを憎悪するでしょう。
人間っていうのは対極として理性と悪意があったとしたら普通は理性の方が勝ってるでしょ?
そのバランスが崩れたらそうなっちゃうってい与.そういう。
悲劇的なことが起こった人達は憎悪の権化になってるわけですよ。憎悪イコール悪意じゃないですか。
(中略)結局、日常の中の非日常っていうか、そんなのって意識しなくてもある日突然やってくるでしょ、大体そういう感じの曲ですね。

曲的には今までには無かったタイプの静と動のダイナミックを感じさせる長編ですよね。
山:ストーリー的に長い話だから、結果的に色んなシーンを織り込んで。
玉:例えば、第一ギターソロの後の変拍子とかそうですよね。あれはモチーフとしてはピエロが踊っているイメージ。

それから“Stone”。
玉:これは麻薬中毒の話です。
数時間前までトリップ状態に入ってたっていう、麻薬がどんどんボロボロにしていく過程ですね。
一番簡単やな(笑)。あれはわかりやすいと思います。

続いて“Mind Wars”は。
玉:アメリカだとベトナム戦争、ロシアだったらアフガニスタン紛争ってあったでしょ、あれで戦争から帰ってきた人間がどんな状態かっていう曲なんです。
要するにほら、戦争の緊張感が抜けきれないっていうか、いつまでもジャングルの中にいてて、物音がするとそちらへ銃を向けちゃう。
例えば、悲劇的な話で、その緊張感が抜けきれなくて、ベッドで寝てて後ろで物音がしたら自分のかみさんなのに反射的に殺しちゃったっていう話がアメリカとかであるでしょ。テーマとしてはそれなんですよ。

9曲目が“Purgatory Way”。
玉:中世に十字軍ってあったでしょ。
あれもそうですけど、キリスト教って無茶苦茶な布教活動とかしましたよね。
じゃあキリスト教というのもが本当に血を求めてたのかって考え出したら、それは行動としては根本的に間違ってたと思ったんですよ。
例えば映画で言ったらロバート・デ・ニーロが主演してた「THE MISSION」とか、知ってますか?南米に布教活動した時の話なんですけどね。
(中略)結局、"Purgatory"っていうのは、煉獄なんですよ。人間としての天国の門に辿り着くための試練なんですけど…
ダンテの神曲とか読まれたことありますか?要するにその門まで辿り着くのに1年で辿り着く人がいれば、3万年経っても辿り着けない人問もいるわけですよ。
そんな無茶苦茶な布教活動をしていて、本当に貴方達の言っている天国に辿り着ける人が何人いてるんだ、っていう詞です。

そしてラストは“Gurdian Angel”です。
玉:ハハハ、これはストーカーなんです。ストーカーのラブバラー一ドと言ってもいいと思います(笑)。
毎晩毎晩女の子の部屋の外から見つめてて、電気が消えると安心して帰っちゃうっていう。
ストーカーっていうのは思い込みが激しいから、彼女を守ってあげなくちゃいけない、彼女を見つめるのは僕だけだ、っていう事で“Guardian Angel”、自分のことを守護天使だと思ってる。
そんなに愛してる女性に対してアイラブユーって絶対言えないんですよ。
「君は僕を愛してる」って言い続けるんですよ。「君には愛が必要だ」って、本当に愛が欲しいのは自分のくせに、それを言えないし認めたくないんですよ。
…まあ、実際にストーカーっていうのはやったことがないけど(笑)、もしやったとすればこんな気持ちなんじkないかなっていう詞なんですよ。
ただある意味では、究極激しいのやった後に(アルバムのラストとして)和める曲になってませんか?
でも大間違いなんですよ(笑)。なごみでしょ、あれ。
山:その歌詞やから淡々と曲を進める必要があったよね。

まあ、HYDRAが単純なラブバラードを作るわけないと思ってたんですよ(笑)。
玉:そういう事ですね(笑)。
山:ちょっとねじれてるんでね。
玉:いつか作ってみたいですけどね。
山:絶対に歪んでんのや。
玉:どっか歪んでて。そやな、いつの間にか物事を斜めから見る習性が出来上がってしまってんな。

全体的には、利己主義とか欺瞞とか、自分勝手な行動が周りに波紋を投げかけていくというか…。
玉:蔓延ってますよね、実際。湾岸戦争にしてもそうですけど、あれはイスラム教vsキリスト教じゃないですか。 今でも同じ事をやってるんですよ、人間は。
何百年経っても人間ってやってること変わんないなぁって思いますよね。

ところで、サウンドとしてはアルバム通して聴いた時に曲のバラエティに富んでると感じたんですが、様々な方向性からチャレンジしていこうという意欲が表れてるような気がしました。
玉:それはありますよね。

勿論土台となっているのはヘヴィメタル、パワーメタルなんでしょうけど…。
玉:う〜ん、実は最近それは無くなってきてるんですよね。
実際の話として、今までヘヴィメタルだとかハードロックっていうのは僕等が若い頃からずっと聴いてる曲ばっかりで、これは僕等にとってはもう空気なんですよね。
この前提があるからこそ今の音になってるわけで、要するにパワーメタルだのヘヴィメタルだのというのに固執して拘って作ってる曲というのはないです。
山:拘らんでも出てしまうからな。
玉:そうやね。自然とヘヴィなものになってしまうんですね。

別段意識せずとも自然と滲み出てしまうという、逆にそういう自然な所を基盤にして色んな方向牲やスタイルにチャレンジしていきたい。
玉:そうですねえ、この方向性から、出来ることなら音としてはどんどん拡散させていきたいんですけどね。

HYDRAにとってヘヴィメタルの進化っていうのはどんなものなんですか。
玉:所謂進化という前提の前に変化というものがありますよね。
変わっていくっていうのはより良くなる為に変わっていくわけじゃないですか。もしその方向性が袋小路だったとしたら引き返すでしょ。
僕等にとっての変化は進化です。例えばIRON MAIDENとかなんて偉大なるワンパターンですけど、僕たちはあの方向性とは対極的に向かうんじゃないですかね。今回のアルバムで、ここから何を始めるかっていうね。

HYDRAというと、テクニカルという評価が付きまといますよね。
玉:これはあんまり意識してやってないのが本音やね。
ただまあ、さっきも言うたように変拍子を採り入れるにしても必然という前提があるから「この表現をする為にこの変拍子があるんだ」っていう。
だから「変拍子をやるためにこの曲があるんだ」は無いんですよ。例えば「このギターソロを
弾きたいが為にこの曲になりました」っていう作り方は無いんですね。
だからテクニカルって言うても実はピンと来ないのが本音です。
山:そんなにテクニカルなことをやってるわけではないんですよ。
玉:言われるたびにこそばゆいっていうか(笑)。

ギターで時折スラッシュ風の刻みとか入ってきますが…。
山:ああ、ある…かもしれない。ただ、スラッシュを(そんなに多く)聴いたことがないという(笑)。
玉:例えば、TESTAMENTとか「いっぺんこれ聴いてみい」言うて教えたのも僕なんですけど、全く意識もしてないのにギタースタイルとしてはアレックス・スコルニックなんかに似てたりするんですよね。
でもあれは、理路整然としてるもんね。
山:ギターソロは作ってしまう…作ってしまうというか、その中にどうしても曲を小さくして入れてしまいそうになる(笑)。

例えば、スラッシュとかデスとかブラックとか、そういったよりアグレッシブなサウンドからインスパイアされることは全く無いのですか。
山:特にはないですけど…。
玉:基本的にはあんまり音楽聴かん人やから、この人は(笑)。
山:アグレッシブな面とかを出そうとすると、どうしてもそういう方向にある程度は向かってしまうんですよ、勝手に。多分スラッシュとかもそのアグレッシブさを追及していくうちにああいう風になっていったんやと思うし。
玉:あれはある種、統一的な到達点じゃないですか。ただまあ、SLAYERにしてもMETALLICAにしても、ANTHRAXもそうですけど、カテゴライズとして「自分達はスラッシュメタルだ」って自分達から言い始めたわけじゃないでしょ。周りがカテゴライズして「あいつらはスラッシュだ」って。
でも個性が無いかっていったらそれぞれに個性を持ってますよね。

ここから話は少し変わるんでずけど…
96年に2曲レコーディングしたじゃないですか。あれはデモとして録ったわけじゃないですよね。

玉:あれはアルティメット(VACD「Kill’em All Fakin’Metals Vol.2」/Ulti-mate Network)用の音源なんですよ。時間的に余裕があるから「1バンドで10分位は余裕があるよ」って言われたんで2曲録ったんですよ。本当は僕
等のつもりとしては2曲入る予定だったんですけど、ところがまぁ、向こう側で削っちゃったっていうね。

あの“Anger”って、デモ「HYDRAU」に収録されていた曲のリメイクじゃないですか。
その当時は日本語詞だったわけで、玉井さんが入ってから英詞に書き直したっていう事もありますけど、その他の曲についてリメイクしたりとかっていう事は考えてますか。

玉:何かあるんでしょ、ネタ的には。
山:リメイクするとしたら…っていうか、リメイクするする予定の曲はあ
るんですよ。"Long Way To Lord"とか。
玉:うん、デモテープ(HYDRAV)の曲は次回のアルバムに入れようと思ってます。
山:3曲使うかどうかはわかりませんけど、1曲は使うと思います。

今回そういった週去にリリースした曲を収録しなかったのは、やはりコンセプトに沿わなかったからですか。
山:うん、途中から「テーマに沿って…」になってしまったから、それに合わせて(曲を新規に)作り起こし。
玉:コンセプトに沿って作っていった曲ばかりやから、入る余地はなかったですね。
“Long Way To Lord”っていう曲に関していうと、あれは啓蒙主義的な部分があって、人間はこのままじゃないはずだ、もっと良い方向に行けるはずだ、っていう…俺らにしたらポジティブな考え方の曲で(笑)。
過去にこんなことあったけど、もっとより良い方向に行けるはずだっていう詞なんですよ。
山:前向きやな。

まもなくアルバムはリリースされると思いますが、何か今後の予定は考えてますか。
玉:特に発売記念ツアーっていうのは考えてないですけどね。
山:ライブ活動は再開ですね。
玉:ライブ活動は…前もそう多い方じゃなかったけど、結構これからは頻繁にやろうと思ってます。
ま、基本的にライブバンドですからね。うちはライブバンドですよ(笑)。
そんな言うてるほどライブの本数は重ねてないですけどね。
山:予定としては今年中にはまたレコーディングに人る予定はあるんですけどね。
玉:セカンドアルバム用に…って、どこがライブバンドやねん(笑)。
山:でも、それ位から入っておかんと、また時間かかるかもしれんし。

今回のアルバム「Exhibition Of Malice」で一番聴いて欲しい点、感じて欲しい点は何処ですか。
玉:こんな事を言うたら売れんかもわからんけど、このアルバムはね、「毒」ですよ。「劇薬」です(笑)。
だから、使う人によっては酷い目にあうかもしれない。
でも、使う人によっては非常に良い薬になるかもしれない。
だから本当は「Parental Advisoiy(Explicit Lydcs)」のマークを人れようかっていう話もあったんですけど(笑)まあそこまで酷いのは入ってないやろという事で入れなかったんですけどね。スプラッター映画じゃないんだからそこまでは行ってないし、オブラートに包んだ部分っていうのは結構ありますね。
それと特に人間の悪意を全般的にアルバムにまでしてしまうバンドなんて今迄なかったでしょ。
…無きにしも有らずか。
山:無いことはないやろ。
玉:でもこんだけ赤裸々に扱ったのは初めてちゃう?ある意味では毒で劇薬だけど、動物園みたいなもんで鑑の外から見てたら大した事はないよっていう感じかな。
山:まあ、全曲を通して聴いて欲しいかな。どれかが欠けるとバランスが変わってくると思う。
玉:そうやな。アルバムを通して聴いてもらったら、7曲とか5曲じゃ絶対わからない味っていうのがきっとあると思うんですよね。どれが欠けてもきっとこのアルバムっていうのは違ったもんになっちゃうだろうし、なってたと思うんですよね。だから、聞きどころは全部ですね。…言うたモン勝ちやな(笑)。
乾:聞き所は全部ですね。好きな人はとことん聴いてしまうと思うし。
玉:これはハマったら麻薬になると思うけどな。はまらない人にはどうってことないのかもしれんけど(笑)。

渾身の力作ということで、今のHYDRAの全てを注ぎ込んだという実感はありますか。
玉:それはありますね。これは白信を持って言える事ですけど、僕等の全人格をもって作ったアルバムやっていうのは確かですね。

人間性を晒け出して'いる。
玉:そうですねぇ〜。こう、この人は斜めからモノを見てるんやな、っていう部分ではバレまくりっていうね(笑)。
山:絶対に歪んでるよな。





KABBALA#21
平成11年8月28日発行
定価 \500円(税込)
Total Japanese underground thrash & heavy metal magazine

KABBALA

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